Apache HTTP サーバ バージョン 2.1
この文書で扱う範囲は、Unix や Unix に類似したシステムでの Apache のコンパイルとインストールです。 Windows における コンパイルとインストールに関しては「Microsoft Windows で Apache を使う」をご覧下さい。 その他のプラットホームに関しては「プラットホーム」をご覧下さい。
Apache 2.0 の設定とインストールの環境は、Apache 1.3 とは
完全に異なるものになりました。簡単にインストールできるように、
Apache 1.3 では特製スクリプトを使っていました。
Apache 2.0 では他の Open Source プロジェクトと同様の環境に
するために libtool
と autoconf
を使うようになっています。
マイナーバージョンからその次のバージョンにアップグレードする (2.0.50 から 2.0.51 へ等) 場合は、まず アップグレードをご覧下さい。
ダウンロード | $ lynx http://httpd.apache.org/download.cgi
|
展開 | $ gzip -d httpd-2_1_NN.tar.gz |
設定 | $ ./configure --prefix=PREFIX
|
コンパイル | $ make |
インストール | $ make install |
カスタマイズ | $ vi PREFIX/conf/httpd.conf |
テスト | $ PREFIX/bin/apachectl start
|
NN は最新のマイナーバージョンナンバーに、
PREFIX はインストールするサーバでのファイルシステムのパスに、
置き換えてください。PREFIX を指定しなかった場合は、
デフォルトの /usr/local/apache2
になります。
Apache HTTPD のコンパイルとインストールに必要なものをはじめとして、 編集とインストールプロセスでのそれぞれの項は 次に詳しく記述されています。
Apache のビルドには次のものが必要です:
PATH
には make
といった基本的なビルドツールが含まれている必要があります。Apache は Apache HTTP サーバダウンロードサイトからダウンロードできますし、 同じ場所に幾つかのミラーサイトもリストしています。 ここから最新の安定版が手に入ります。
ダウンロード後、特にミラーサイトを使った場合は、
ダウンロードしたものが Apache HTTP
サーバの完全で改竄されていないバージョンであることを
検証することが重要です。これはダウンロードした tarball の PGP 署名を
テストすることによって検証します。
これは二つの段階があります。
まず KEYS
ファイルを Apache 配布サイト
からダウンロードしてください。(KEYS
ファイル自体が
改竄されていないことを確実にするために、以前の Apache
配布から取り出したファイルを使ったり、
公開鍵サーバから鍵を取り込むのもいいでしょう。)
自分の個人キーホルダーに鍵を取り込むには、
次のコマンド (pgp のバージョンに依存) を使います:
$ pgp < KEYS
または、
$ gpg --import KEYS
次のステップでは、tarball を PGP 署名でテストします。
PGP 署名は必ず メインの Apache
ウェブサイトから取得してください。
署名ファイルへのリンクは対応するダウンロードリンクの隣にあり、また
Apache
配布サイトの特定のディレクトリで見つけることもできるでしょう。
署名ファイルの名前は、ソースファイルの tarball と同じ名前に
.asc
を付加したものになっています。
以下のコマンド (やっぱり pgp のバージョンに依存) のどれか一つで、
配布ファイルをチェックすることができます:
$ pgp httpd-2_1_NN.tar.gz.asc
または、
$ gpg --verify httpd-2_1_NN.tar.gz.asc
すると、こんなメッセージを受けるはずです。
Good signature from user "Martin Kraemer
<martin@apache.org>".
自分のキーホルダーに格納されている信頼関係が原因で、
"鍵とその鍵の署名者が検証できなかった"
という旨のメッセージを同時に受けるかもしれません。
しかし、KEYS
ファイルの信憑性を受け入れるならば問題ではありません。
Apache HTTPD の tarball からソースファイルを展開して取り出すとは、 単なる圧縮の解除と tar の展開です:
$ gzip -d httpd-2_1_NN.tar.gz
$ tar xvf httpd-2_1_NN.tar
配布用のソースコードがある現在いるディレクトリの下に、
新しいディレクトリが作られます。
サーバをコンパイルする段階に進む前に、そのディレクトリに
cd
で移動してください。
次のステップは、あなたのプラットホームと
個人的な要求に合うように Apache
ソースツリーを設定することです。
これは配布ディレクトリのルートディレクトリにある、
configure
スクリプトで行ないます。
(Apache ソースツリーの CVS
版をダウンロードした開発者は、次のステップに進む前に
autoconf
とlibtool
をインストールして buildconf
を実行する必要があるでしょう。
公式リリースではこの作業は必要ありません。)
デフォルトオプションを使ってソースツリーを全て設定する
のであれば、単純に ./configure
とタイプしてください。
デフォルトオプションを変更できるように、configure
には様々な変数やコマンドラインオプションが用意されています。
一般的に、環境変数が ./configure
の前に設置されて、
他のオプションはその後に設置されます。
ここで最も重要なオプションは Apache
をどこにインストールするかを決める location prefix です。
なぜなら、Apache が正しく動作するためには
この場所用に設定されていないといけないからです。
しかし、お好みにより利用できるオプションはもっと沢山あります。
ちょっとどんなことができるかを見せましょう。
ここで典型的な例として、/sw/pkg/apache
というインストールツリーでコンパイラとフラグを指定して、
さらに二つの追加モジュール mod_rewrite
と
mod_speling
を後で DSO
メカニズムでロードするようにコンパイルしてみます:
$ CC="pgcc" CFLAGS="-O2" \
./configure --prefix=/sw/pkg/apache \
--enable-rewrite=shared \
--enable-speling=shared
configure
を実行したら、システムの機能を
テストしたり、後でサーバをコンパイルするために必要な Makefile
を生成したりするのに数分間かかるでしょう。
Apache の全ての設定フラグを見る最も簡単な方法は、
./configure --help
を実行する方法です。
引数や環境変数に関する簡単な記述が出力されます。
autoconf
でのビルドでは幾つかの環境変数を使ってビルド環境を
設定します。一般的に、これらの変数で Apache をビルドする際の
方法が変わったりしますが、できあがるサーバの機能には影響ありません。
これらの変数は configure
を呼び出す直前の環境中に
置くことができますが、通常は上に示した例のように configure
のコマンドラインでもっと簡単に指定できます。
CC=...
CPPFLAGS=...
CFLAGS=...
LDFLAGS=...
LIBS=...
-L
"と"-l
"オプション) 。
INCLUDES=...
-Idir
") 。TARGET=...
[デフォルト値: httpd
]NOTEST_CPPFLAGS=...
NOTEST_CFLAGS=...
NOTEST_LDFLAGS=...
NOTEST_LIBS=...
NOTEST
でない版" のものと同じ機能を
持っています。しかし、これらの変数は autoconf
がテストを行った後のビルドプロセスにおいてのみ、適用されます。
これを使うと、テスト中に問題を起すけれども
最終的には必要になるフラグを
含めることができるようになります。SHLIB_PATH=...
autoconf
出力オプション--help
--quiet
cheking...
" といったメッセージがプリントされないように
します。--verbose
Apache をインストールするパス名を設定するには、 現在二通りの方法があります。まず一つ目は、 ディレクトリを指定して、その下にデフォルトの配置で Apache のインストールを行う方法です。
--prefix=PREFIX
[デフォルト値:
/usr/local/apache2
]アーキテクチャに依存したファイルを、 異なるディレクトリに配置するようにもできます。
--exec-prefix=EPREFIX
[デフォルト値: PREFIX]二つ目の方法は、もっと柔軟にインストールパスの配置を
設定する方法で、config.layout
ファイルを
使います。この方法を使うことによって、
Apache のインストール中に、それぞれのファイルのための配置を
個々に指定できるようになります。config.layout
ファイルには設定例が幾つか含まれていますし、
お好みの設定を次の例に従って作り出すこともできます。
このファイル中では、異なる配置は <Layout
FOO>...</Layout>
セクションでグループ化され、
FOO
といった名前で参照されます。
--enable-layout=LAYOUT
config.layout
ファイル中での、
指定された名前のレイアウトを使用します。Apache はモジュール化されたサーバです。
ごくごく基本的な機能だけが、コアサーバに含まれています。
拡張機能は様々なモジュールの形で提供されます。
設定プロセス中では、どんなモジュールをサーバで使うように
コンパイルするか選ばなければなりません。このマニュアルにあるモジュールの一覧を
参照できます。
"Base" ステータスの
モジュールはデフォルトで含まれますし、
使いたくないのであれば、わざと無効にしなければ
なりません (例えば mod_userdir
)。
他のステータスのモジュールは、
使いたければ有効にしなければなりません
(例えば mod_expires
)。
Apache と一緒にコンパイルして使うようにするには、
二通りの方法があります。一つめはモジュールを
スタティックコンパイルする方法です。この場合は、
Apache のバイナリに恒久的に組み込まれることになります。
これの代わりに、もしオペレーティングシステムが動的共有
ライブラリ (DSO) (訳注: Dynamic Shared Object) を
提供していて autoconf
がそれを認識できる
場合は、モジュールをダイナミックコンパイルする方法があります。
DSO モジュールは Apache のバイナリとは別に
保存され、mod_so
で提供される
実行時設定ディレクティブを使って
組み込んだり取り外したりできます。
動的モジュールを実際に一つもコンパイルすることなく
サーバが DSO をロードできるようにするには、
--enable-so
と明示的にすることができます。
--enable-MODULE[=shared]
=shared
オプションを付加してください。--disable-MODULE
--enable-modules=MODULE-LIST
--enable-mods-shared=MODULE-LIST
--enable-modules
や
--enable-mods-shared
オプションに使う
MODULE-LIST は、普通はスペース区切りの
モジュール識別子のリストです。
例えば mod_dav
と mod_info
を有効にする場合は、次のどちらかが使えます。
./configure --enable-dav --enable-info
または、同等の
./configure --enable-modules="dav info"
これに加えて、特別なキーワード all
や
most
を使って、
一度に全てあるいはほとんどのモジュールを加えることができます。
その後で好きなモジュールを --disable-MODULE
オプションを使って取り除くことができます。
例えば、mod_info
を除く全てのモジュールを DSO
モジュールとして組み込む場合は、次のようにします。
./configure --enable-mods-shared=all
--disable-info
標準的なモジュールに加えて、Apache 2.0 では
Multi-Processing Modules (MPM)
を選択してインクルードします。ただ一つだけの MPM
をコンパイルのプロセスで含める必要があります。
個々のプラットホーム向けのデフォルトの MPM は MPM 文書に一覧がありますが、
configure
コマンドで置き換えることができます。
--with-mpm=NAME
mpm_name という MPM を有効にするには次のようにします。
./configure --with-mpm=mpm_name
mod_authn_dbm
と mod_rewrite
の DBM RewriteMap
等、 Apache 機能の幾つかでは情報の検索に単純な key/value
データベースを使用します。Apache には SDBM がソースコードごと
含まれていますので、このデータベースはいつでも利用可能です。
他のタイプのデータベースを使用したい場合は、次の
configure
オプションが利用できます。
--with-gdbm[=path]
--with-ndbm[=path]
--with-berkeley-db[=path]
/lib
と path/include
を検索して関連ファイルを探します。path
にはコロンで区切って複数のインクルード、ライブラリパスを指定できます。
Apache には suexec と呼ばれる 補助プログラムがあります。 このプログラムはユーザの CGI プログラムを隔離するために 使用することができます。しかしながら、suexec を適切に設定しなければ、 セキュリティ上致命的な問題をかかえる場合があります。 そのため、この機能を実装する前に suexec 文書をよく読んで一考しておきましょう。
これで Apache の様々なパーツをビルドすることができます。 次のコマンドを単純に実行するだけです:
$ make
基本的な設定をするのに、Pentium III/Linux 2.2 のシステムでおおよそ 3 分程度かかりますが、 あらかじめご了承下さい。 また、時間はハードウェアや有効にしたモジュールの数に 大きく依存するでしょう。
さて、設定したインストール PREFIX
(前述の --prefix
オプションを参照)
以下にパッケージをインストールする段階になりました。
次のコマンドを実行してください:
$ make install
アップグレードする場合は、インストールでは設定ファイルや ドキュメントファイルの上書きは行いません。
次に PREFIX/conf/
以下にある 設定ファイルを編集して、
Apache HTTP サーバをカスタマイズします。
$ vi PREFIX/conf/httpd.conf
docs/manual/ の Apache マニュアルをざっと見てください。 または、http://httpd.apache.org/docs-2.1/ にあるマニュアル最新版、設定ディレクティブに当たってみてください。
次のコマンドを実行して Apache HTTP サーバを開始できます:
$ PREFIX/bin/apachectl start
URL http://localhost/
を通して最初のドキュメントに対する
リクエストを発行する事ができるはずです。これで見える
ウェブページは DocumentRoot
以下に置かれたもので、通常は
PREFIX/htdocs/
でしょう。
サーバを再び停止するには、
次のコマンドを実行します:
$ PREFIX/bin/apachectl stop
アップグレードでまず行なうべきことは、リリースアナウンスと
ソースディストリビューションに入っている CHANGES
を読んで、
自身のサイトに対して影響を及ぼす変更点を探すことです。
メジャーリリース間の変更をする場合 (例えば 1.3 から 2.0 へ、2.0 から 2.2 へ)
は、コンパイル時や実行時の設定に大きな差異があるでしょうから、
手動の調整が必要になるでしょう。モジュールも全て、API
の変更に合わせるためにアップグレードが必要になるでしょう。
マイナーバージョンから次のバージョンにアップグレードする場合
(例えば 2.0.55 から 2.0.57 へ) は、もっと簡単です。
make install
を実行しても今あるドキュメント、
ログファイル、設定ファイルは上書きされません。
さらに、マイナーバージョン間では configure
オプション、
実行時の設定、モジュール API に不整合が起こらないように、
開発者は最大限の努力をしています。
大抵の場合、同一の configure
コマンドライン、
同一の設定ファイル、モジュール全てが正常に動作するはずです。
(2.0.41 以降ではそのようになっています。それ以前のバージョンには
不整合が存在します。)
前回のインストール時のソースツリーが残されているのであれば、
アップグレードはさらに簡単です。古いソースツリーのルートに存在する
config.nice
ファイルには、前回ソースツリーを設定した時の
configure
コマンドラインが入っています。
次のバージョンにアップグレードする場合は、config.nice
ファイルを新しいバージョンのソースツリーにコピーし、
それを編集し必要な変更を行なって、次のように実行します。
$ ./config.nice
$ make
$ make install
$ PREFIX/bin/apachectl stop
$ PREFIX/bin/apachectl start
--prefix
と異なるポート (Listen
ディレクティブで設定します)
を使用することで、古いバージョンに影響を与えずに新しいバージョンを
インストールし、実行できます。